音楽と犬
      2015 / 10 / 12 ( Mon )
      先日モフ男君を連れてお邪魔したお宅から、
      素敵なピアノの旋律が聴こえてきました。
      伺えば、お母様が朝の練習中でいらっしゃるとのこと。

      ご厚意で、モフ男と一緒にレッスンルームにお邪魔させていただきました。

      バッハのフランス組曲を練習されていたお母様、
      飛び入り見学したモフ男のために、子犬のワルツを弾いてくださいました!

      生まれてはじめて楽器の生演奏を耳にしたオラ、もう興味津々。
      時々わん、わん!と合いの手(?)を入れつつ、ご機嫌さんでした。




      昨年亡くなったこちらのお宅のワンちゃんも、よくグランドピアノの下で
      寝そべって、お母様の演奏を聴いていたのだそう。
      (時々大きな音にびっくりして逃げ出すこともあったらしいです 笑)


      私も何度か会ったことのある子。

      きっとこんな姿勢で、こんな表情で聴いていたのかな、と想像しながら
      演奏に耳を傾けていました。


      ふと、以前知人よりいただいたお手紙に書かれた次の一文が
      なぜか思い出されました。



      歌っている時は

      「今、自分は生きている」ということ以外のすべてを忘れます。




      闘病中も、大好きなイタリア歌曲のレッスンのため定期的に上京されていました。
      Caro mio benに合格点をもらえ、次は'O sole mioに挑戦します、と嬉しそうに
      綴られていました。
      今にして思えば、既に主治医から余命の宣告は受けておられたように感じます。


      音楽って、そんなに凄い力があるのだろうか・・・。


      音楽を嗜まず、
      自身の死を眼前に突きつけられた体験も持ちあわせていない私には
      彼女が放った言葉の真の意味、凄さがよく理解できませんでした。
      (おそらく今も・・・)




      そうだ、そういえば・・・・・・



      その彼女とこちらのお宅のワンちゃんが一緒にいるところを
      一度目にしたことがあるのを思い出しました。

      彼女の足下に静かに伏せ、心地よさげにじっと撫でられていたっけ。

      犬と暮したことのない方とは思えぬ、愛情こもった優しい撫で方でした。

      その光景を私が鮮明に覚えているのは、そのワンちゃんが犬飼いの私にではなく、

      彼女の傍から離れなかったから。

      穏やかな優しさを持つもの同士、何か引き合うものがあるのかな、

      そう思ったのでありました。


      そんな思い出がとりとめなく蘇った、朝のひととき。

      誰しもこういう日って、ありますよね。



      さて今日は、谷川俊太郎さんのこちらの詩でお別れしましょう。



      ネロ (愛された小さな犬に)


      ネロ
      もうじき又夏がやってくる
      お前の舌
      おまえの眼
      お前の昼寝姿が
      今はっきりと僕の前によみがえる
      お前はたった二回程夏を知っただけだった
      僕はもう十八回の夏を知っている
      そして今僕は自分のや又自分のでないいろいろの夏を思い出している
      メゾンラフィットの夏
      淀の夏
      ウィリアムスバーグの夏
      オランの夏
      そして僕は考える
      人間はいったいもう何回位の夏を知っているのだろうと

      ネロ
      もうじき又夏がやってくる
      しかしそれはお前のいた夏ではない
      又別の夏
      全く別の夏なのだ

      新しい夏がやってくる
      そして新しいいろいろのことを僕は知ってゆく
      美しいこと みにくいこと 僕を元気づけて くれるようなこと 僕をかなしくするようなこと
      そして僕は質問する
      いったい何だろう
      いったい何故だろう
      いったいどうするべきなのだろうと

      ネロ
      お前は死んだ
      誰にも知れないようにひとりで遠くへ行って
      お前の声
      お前の感觸
      お前の気持ちまでもが
      今ははっきりと僕の前によみがえる

      しかしネロ
      もうじき又夏がやってくる
      そして
      僕はやっぱり歩いてゆくだろう
      新しい夏をむかえ 秋をむかえ 冬をむかえ 春をむかえ 更に新しい夏を期待して
      すべての新しいことを知るために
      そして
      すべての僕の質問に自ら答えるために

                     集英社文庫『二十億光年の孤独』より


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