さよならは言わない
      2015 / 05 / 18 ( Mon )
      昨日、とても心を打たれるブログ記事を拝読しました。

      著名な脚本家でいらっしゃる、井沢満氏が亡き愛犬たちへの想いを
      綴られた記事です。

      転載のご了解をいただけましたので、全文ご紹介させていただきます。


      最愛の犬に「さようなら」を未だどうしても言えずにいることを
      内心恥じていた私は、「それで、いいじゃないか」と優しく背中ぽんぽん
      していただいたような気すらして、涙が止まりませんでした。

      そう、私も。

      さようならは、言わない。




      さようならは、言わない


      冬物を何点かクリーニングに出そうとしていた手が止まった。

      紺の太い毛糸をざっくりと編み込んだ、ヨージヤマモトのベストに、

      ちらりと白い短い毛がついていたのだ。

      一瞬、時間が止まった。

      10年前に見送った愛犬の毛だった。

      “ふたり”を送り出して、その二人目の子の毛だった。

      葬儀を終えたその日に、私はその子にまつわるありとあらゆるもの、

      食器から首輪、キャリーバッグ、上着、リード・・・・すべてを処分したのだ。

      冷たい、という人もいたが逆である。

      思い出の品が胸を噛んで痛すぎたので手放したのだ。

      それでも、カーペットや床の思わぬところに毛が残っていて、

      最後の1本がなくなるまで半年はかかったような気がする。

      共に暮らしていた家も土地も捨てて引っ越した。

      毎日散歩した道を歩けば姿が浮かび、見上げた眼の色を思い出し、

      胸が張り裂けた。

      だから、そこを去った。

      でも、むろんそれで思いは消えはしない。

      今でもずっと共にある。

      そして、10年ぶりにあらわれた一本の毛。

      そのベストはクリーニングに出すのを止めた。

      一生、洗わず手元に置いておく。

      抱きしめた体温がまだそこに陽だまりのように残っている。

      彼らにさようならは、まだ言わない。

      一生きっと言わない。

                  「井沢満ブログ」 2015年5月16日記事より


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