『犬そり 酷寒シベリア横断の旅』
      2010 / 02 / 27 ( Sat )
      1月28日に、NHK教育テレビ「地球ドラマチック」で、
      シベリア8400キロを犬そりで横断する冒険家ニコラ・ヴァニエの
      一行を追ったドキュメンタリー番組が放送されました。
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      ヴァニエ氏と犬たちのシベリア探検の旅は2005年12月2日にバイカル湖
      からスタートし、8,400キロメートルの距離を109日かけて駆け抜け、
      その間、ロシアの13地区を横断して赤の広場でゴール。
      3か月以上にも渡る長旅を、40分にまとめきれるのかな?と思いきや
      これが・・・大変素晴らしい内容でした!
      ヴァニエ氏のメッセージが沢山詰まっていますので、私の余計な
      感想は極力はさまず、淡々とヴァニエ氏の言葉と番組をご紹介させて
      いただきたいと思います。

      2005年12月2日、一行はバイカル湖を出発。
      ヴァニエ氏と冒険を共にするのは、10頭のそり犬たち。
      (その中には、「狩人と犬」に登場したアパシュ号の名も)
      そして、犬そり隊の「道づくり」のため危険をものともせず
      雪に覆われた大自然の中をスノーモービルでゆく先発隊数名
      の存在も忘れてはいけません。
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      ヴァニエ氏は、冒頭にこう語ります。

      「高い山々、深い海、永久凍土・・何より人々にこの風景を
      守らなくては、と感じてもらいたい。」

      出発した一行は、早速異常気象の影響をもろに受けます。
      雪が降らず、シベリアのどこにも雪がない・・・。
      雪がなければソリを走らせることができません。
      やむなく、ソリの底に車輪をつけて走ることに・・・。

      やっと雪の上を走れるようになっても、行く先々でルート変更を
      余儀なくされます。
      凍った川の上を走る予定が、暖冬の影響で所々川が凍っていないため、
      急遽森の中を通って遠回りをすることになった犬そり隊。
      一日80~100㎞進む目標が、雪が積もる森の中では、一度に10メートル
      進むのがやっとという状況。

      ソリが横転したり、木に突っ込む様子も、カメラはしっかり捉えます。
      犬たちの士気も低下。

      「ほとほとイヤになった・・・」疲れきった表情のヴァニエ氏。

      「明日にはもっとよくなると期待してしまう。
       谷を抜ければ・・・・・そんなことの繰り返し。」

      狼の新しい足跡がある中での山中野宿は気が抜けません。
      遠くに聞こえる狼の鳴き声。
      夜通し、火を焚いて疲れた体を休めるヴァニエ氏と犬たち。

      やっと森を抜け、やっとソリを走らせることができた時の
      ヴァニエ氏と犬たちの嬉しそうなこと!

      「(そり犬の)走りたい、という欲求は一頭一頭の体の内で
       燃えている炎のようなもの。
       その炎を燃やし続けられれば、マッシャーとして最高に
       嬉しい。
       愛情を注ぎ、犬の気持ちをわかってやることでその炎を
       絶やさないようにしている。
       犬たちの持つ炎を燃やし続けて最高の炎にすることが
       広大な大地を走る喜びの一つ。」

      「犬そりのチームは、サッカーチームに似ている。
       マッシャーは、フォワード、バック、ミットフィールダーの役割
       を果たす犬たちを地形や犬そりの種目によって一頭一頭うま
       く配置し、彼らの気持ちを理解してやって、喜んで走り続けさせ
       てあげられれば、この上なく嬉しい。」

      犬たちと旅を楽しむヴァニエ氏の口から率直に語られる言葉は
      どれも興味深いです。

      「犬が後ろにいる人間(マッシャー)と同じ気持ちでいるのは
       本当に驚き。」

      「犬そりの旅では、寒さそのものは問題ではない。
       いかにペース配分を守って犬たちを走らせるかの方がずっと大変。」

      ※余談ですが、シベリアの酷寒ぶりを収めたシーンもありました。
       まつ毛が凍り、目が塞がってよく見えなくなるため15分ごとに
       まつ毛をとかす、つま先が凍えるので、時々走って血を通わせる、
       鼻を覆い、小さな隙間から犬たちや景色を見る、等など・・・。
       画面を眺めているだけで寒くなりそうなシーンでした(^_^;)

      日に100㎞進む計画が、実際はその半分以下となることもたびたび。
      昼間より、夜の方がはるかに速く走れるそうです(氏いわく、
      狼の夜行性の名残か?とのこと)

      追い風でどんどん快調に走っている時も、犬の体が火照ってくるため、
      2時間毎に止まらなければいけないそうです。
      また、犬たちは2時間毎に栄養補給のビスケットを与えられます。

      早朝、闇の中を進み少しずつ太陽が昇っていく様を白銀に立ち込める
      朝靄の中で眺める一行。何と美しいこと....。

      圧倒的に美しい自然のみならず、カメラは痛ましい状況も
      写しだします。

      道中、横転したソリがぶつかり、心臓マッサージで息を拭き
      返した犬。

      そり犬同士の喧嘩がエスカレートし、複数の犬に襲われ命を
      落とした犬。

      親友を突然亡くし、すっかり元気を無くしてしまったそり犬。

      大切な仲間の死に、ショックを受けるヴァニエ氏。
      犬ぞりでは、序列があり喧嘩はしょっちゅうあるものの、大抵は、
      片方が服従することで収まるが、時々それでは収まらないことが
      ある・・・と。

      「亡くなったナーサックは、陽気でいい奴だった・・・。
       仲良しだったファーファングも、なぜ隣に相棒がいないのかと
       思いながら一人走っている・・。
       私の気持ちにもポッカリ穴があき、この先、旅を続けていく意欲も
       失われそう・・。」

       心底ガッカリし、弱音を吐露するヴァニエ氏。

      その後、自分の隣に親友がいないことで、すっかり
      元気を無くした犬(ファーファング号)がチームの士気にかかわる
      ようになり、急遽カナダで訓練中の犬(タギッシュ号)がチームに
      合流しました。

      (途中参加で、体力も他の犬より劣るタギッシュは、ペースが落ち
       ると、大事をとって、ソリに乗せてもらっていました。)

      旅の途中、出会った人々も紹介されました。

      「狩人と犬」のノーマン・ウィンターと同じ、罠猟師。
      土地を敬い、愛する猟師。食用にせよ、毛皮用にせよ
      どの位の動物を捕ってもよいものか彼らはちゃんとわかっている
      のだ、とヴァニエ氏。

      「現代人はいかに自分たちが天然資源を浪費しているのか
       全くわかっていない。
       自然に頼って生きている点は私たちと同じだが、猟師は
       自然に与える影響と自分の立場をわきまえている。」

      そして、立ち寄った知り合いの遊牧民の家族も紹介されました。
      トナカイを食べ、ほぼ自給自足の生活を送っている家族。

      夏ごとにトナカイの牧草を求め、移動する生活を送る遊牧民を
      「今回の旅で最も素晴らしく、最も哀しい光景」と語った
      ヴァニエ氏。

      自然と調和した生活を送り、土地と平和な関係を保っている
      生活は素晴らしいとしつつ、この先遊牧民を待ち受けている
      過酷な運命を思い、胸が締め付けられる思いがしたことでしょう。
      苔など、トナカイの餌が育つ永久凍土(ツンドラ)が徐々に
      タイガ(針葉樹)にとって代わられているシベリアの状況。
      近い内、トナカイの餌は大きく不足することになるだろうと
      語っていました。

      いよいよ旅もフィナーレに近づき、ウラル山脈を過ぎる頃には
      伐採光景が、たびたび目にされるようになりました。

      「ここで人間が行っていることは、あらゆる自然への仕打ちと同じ。
       多くの木材を受け取る代わりに、森そのものを食いつぶしている。
       金の卵ではなく、金の卵を産むガチョウをむざむざ殺しているよう
       なもの。」


      バイカル湖を出発してから109日目、とうとうゴールのモスクワ
      「赤の広場」に到着した犬そり隊!
      番組の終わりに、ヴァニエ氏の今回の旅の目的が明かされました。

      「はじめて冒険に出た頃は、森林破壊、環境汚染、異常気象など
       全く耳にすることもなく、常に驚きの目で旅をしたものだった。
       今は、行く先々で、以前ほど驚きを感じない。今回が最後の旅に
       なるだろう。
       この美しい自然を子供たちに残すために、私なりのやり方で
       訴えていきたい。」

      最後は「旅を支えてくれたすべてのシベリアの人々に捧げる」
      という一文で締めくくられていました。


       長い文章を最後まで読んでくださって、ありがとうございます。
       時間にすれば、わずか40分の番組ですが、犬好きの方にはもちろん
       沢山の方にご覧いただきたい作品だなぁ!と心から思いました。
       制作は2006年(フランス)ですので、4年経って初めて日本で
       オンエアされたということなのかな?
       確かにちょっと遅いけど、放送してもらえてよかった。
       
       今後のヴァニエ氏の活動にも注目していきたいですね!

       もし、この番組に興味をお持ちでヴァニエ氏監督の「狩人と犬」を
       まだご覧になっていない方は、ぜひお時間のある時にDVDをご覧
       になってみてください!
      23 : 45 : 04 | 感想あれこれ | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
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