フォーラムレポート -肥満について考えよう-
2012 / 10 / 12 ( Fri ) 今日こそ、先日参加した「どうぶつとの暮らしを考えるフォーラム2012」の
レポートをば。 台風の影響で?全体的に例年より来場者がかなり少ない印象を受けた 今年のフォーラム。 私は仕事の都合で、2日目(9/30)午後からの参加となりました。 3つのプログラムに参加しましたが、当ブログでは昨年に続き竹村先生の プログラムを取り上げたいと思います。 まず特筆すべきは、はじめてハンドアウトが配布されたこと! (しかもフルカラーで立派な作り!) ![]() ※一部濡れてふやけているのは、暴雨の中帰宅した名残・・・(涙) スライド画像の横に、書き込みできるスペースが設けられています。 これは、参加者が家に戻り、得た知識を家族と共有する上で大変 ありがたい配慮だと感じました。 ![]() 協賛企業のDSファーマアニマルヘルスさんに大感謝!! ではでは、セミナーの内容をかいつまんでご紹介していきましょう。 ![]() 「いろいろあるぞ!肥満の原因と対処法 -まずはプロに相談しましょう-」 講師:竹村直行(日本獣医生命科学大学 教授) 日時:2012年9月30日 15:10~16:20 今回のテーマは万病の元といわれる「肥満」。 アメリカでは、実に47%と半数近い犬が肥満、または太り気味であるとの データが紹介されました。 (出典:Todd L. Towell「Practical Weight Management in Dogs and Cats」 先生曰く、よく飼い主さんから「うちの子の適正体重は何キロですか?」と 質問されることが多いが、肥満であるか否かの判断は「体重」といった 数字や見た目の印象で判断するのではなく、 「ボディコンディションスコア(略してBCS)」で判断すべし、と。 「ボディコンディションスコア(BCS)」とは、筋肉や皮下脂肪のつき方 から犬の体型を5段階評価したもの。 BCSの一番のポイントは「肋骨」! ![]() チャートは日本ヒルズコルゲート株式会社のHPより転載 肋骨まわりを触った時に「薄い脂肪に覆われ、(肋骨に)触れることができる」かどうか。 これを、飼い主さんが、愛犬の肥満の可否を判定する「ものさし」として ほしい、と。 もし脂肪に邪魔され、肋骨に触れることが難しい場合、その犬は「肥満」 であり、危険信号が点滅していることを認識してください、とのことでした。 ただし、「肥満」にも、現段階では健康上問題なく、単に食べ過ぎによる 「単純性肥満」と、病気が介在している「二次性肥満」の2種類 があり、その鑑別は一般飼い主では非常に難しい。 よって、ダイエットを検討する前に必ず獣医師の診断を受ける必要があるそうです。 ※肥満や食べ過ぎは、病気(ホルモンなどの内分泌系)が内在している 可能性もあり、飼い主が素人判断するのは危険。 まずは獣医師に助力を求めるべし! 「単純性肥満(単なる肥満)」 →要減量(減量しないと、将来新たな病気の原因になることがある 今は元気でハッピーでも、後々問題を抱えるリスクが高い ため、今すぐダイエットを! 「二次性肥満(病気による肥満)」 →何らかの病気が原因で肥満になっている可能性大 減量が危険なこともあり。 ダイエットではなく、病気の治療が必要となるケース。 (例) ●腹水(心臓病、腎臓病、腸の病気、ガンなど) ●腹部臓器の腫れ(肝臓、腎臓、脾臓、子宮など) ●脂肪がたまる(内分泌の病気)※ ※特に副腎皮質機能亢進症の場合は、よく食べ、よく飲み、排泄も 沢山し、元気に見えることから、飼い主が病気であることに特に 気づきにくい。 →獣医師の診察が不可欠。 次に「肥満がもたらす悪影響」について。 (Todd L. Towell著Practical Weight Management in Dogs and Cats」より) 翻訳:竹村先生 ※下図は、竹村先生の翻訳をもとに、当方にてイラスト加工したものです。 ![]() Thanks to M/Y/D/S 動物のイラスト集 肥満だからといって、必ずしもすべての動物が減量すべきというわけでは なく、特に心臓病や腎臓病を抱えた動物は 減量しない方が良い。 その根拠となるのが「Obesity Paradox(肥満の逆説)現象」 【Obesity Paradoxとは】 ヒトにおいて、肥満は心疾患の発症リスクを高めるが、 既に心疾患を患っている患者に関しては、痩せている患者よりも太り 気味、肥満患者の方が長生き傾向にある、という現象。 犬においても、近年同様の現象が多数報告されているとのことでした。 心不全と診断された犬では、体重が減少した犬よりも、太った犬の方が 長命。慢性腎疾患を抱えた犬のうち、痩せた犬は短命で、太っている犬は より長命であったとのデータが報告されているそうです。 (結論)少なくとも心臓病、腎臓病の動物はダイエットしない方がよい。 食べて、エネルギーを十分摂取しているからこそ、大病と戦う ことができる! (まとめ) (1)肥満には、ダイエットが必要な単なる肥満(単純性肥満)と、 病気による「肥満」(二次性肥満)の2タイプあり →その鑑別は獣医師でないと難しい。 必ず獣医師の診察を受けるべし! (2)肥満の原因となる病気の中には元気、食欲があり排泄も順調で あるため飼い主が気づきにくく発見が遅れがちになることも。 →獣医師の診察が不可欠!せめて年に1回は検診を。 (3)少なくとも心臓病や腎臓病の動物は、減量しない方が良い 最後に、「竹村家で犬の肥満に関して気をつけていること」が 紹介されました。 ①犬の食器はできるだけ小さめのものを選ぶ (理由)大きい器だと、与える側の目には少量しかないように映り、 「こんな少しではかわいそう・・・・」という心理が働き フードを追加しがちに・・・。 小さい器であれば、フードにそれなりの嵩があるように見える ため、フードをつい追加してしまう衝動が抑えられる。 (参考:Todd L. Towell 「Practical Weight Management in Dogs and Cats」より) ②間食・おやつは厳禁(ご褒美は与える) ご褒美は、少量の「ドッグフード」で十分なり! (理由)犬が本当にヒトから与えてほしいのは、必ずしも美味しい 食べ物ではなく、ヒトが手で与えてくれること、優しい言葉を かけながら与えてくれること、その行為に喜びを感じているから ではないか。 よって、与えるものはおいしい食べ物である必要はなく、 主食のフードで十分。 参考として「ちょっとした食べ物が、ビックリするカロリーに!」 という例を紹介くださいました。 (※主食以外のおやつとして与えた場合、ハンバーガー何個分に相当する かを表したもの) 【体重5kgの犬の場合】 ポテトチップス1枚・・・・・・ ![]() 小さなクッキー1個(60kcal)・・・・ ![]() 30gのチーズ・・・・・・・・・・・・・・・・ ![]() ![]() ![]() ![]() (1225 kcal)に相当 牛乳コップ1杯(180cc)・・・・・・・ ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() (1575 kcal)に相当 また、「フードは何グラム与えるかではなく、その後、体型がどう変化 したか確認することが大事!」とのお話もありました。 フードパッケージに記載された参考給与量をベースに与えて (もちろん給与量を獣医師に相談しても良し)、1週間後肋骨まわりを 要チェック。 肥満具合をチェックし、必要に応じてフード量を増減する。 (パッケージはあくまで「参考給与量」であることを頭に入れておくこと) ※TWコメント 竹村先生は、体重測定については触れておられませんでしたが、 特に重度の肥満犬の場合は肋骨まわりの脂肪の微妙な変化に 飼い主が気づきにくい可能性があるため、やはり体重測定も併せて 行う方がベターな気がいたします。 何より、飼い主さんのモチベーション維持にもなりますしね ![]() 関連して、「処方食」は治療の一環として与える食べ物であり、 獣医師が体重・体調の変化を見て良い結果が出ているかこまめに チェックしていく必要がある。 現在、ネット通販などを利用して、安価に処方食を入手している 飼い主さんも増えているが、獣医師が定期的に体重や体調をフォロー できていない状態が懸念される、とのコメントもありました。 余談ですが、犬猫の食餌管理本にお詳しい竹村先生をして 「やっとまともな本が出た!」といわしめた犬猫の体重管理に関する 本がコチラ。 ![]() Todd L. Towell著「Practical Weight Management in Dogs and Cats」 アメリカの獣医師Towell氏により、2011年にリリースされた犬猫の 体重管理に関する実用書。(2012年10月現在和訳版なし) 竹村先生曰く、肥満に関連する病気の中に、「高血圧※」の記載が なかった点からも内容の信頼性が高い!と高評価でした。 (※ヒトと異なり、こと動物に関しては、肥満が原因で「高血圧」になる ことは絶対ないにもかかわらず、肥満の弊害の中に「高血圧」の記載 が見受けられる既存本がほとんどだそうです。) 現在翻訳本はありませんが、英語に支障なく、実践的な体重管理方法 についてお知りになりたい方はアマゾンで購入可能です。 (アマゾンを一応リンクしておきますね。)
以上、70分のレクチャーをざっと駆け足で紹介いたしました。 この肥満に関するプログラムは2部構成で、第二部にて実際に患者家族と 連携して減量成功に導いた横井先生(泉南動物病院)の大変興味深い ケーススタディが紹介される予定でしたが、残念ながら台風で交通ストップ が懸念されたため、参加は諦め、泣く泣く会場をあとにいたしました(涙)。 講師の先生がせっかく興味深いスライドを用意くださっていたので、 ハンドアウトからいくつか抜粋してみますと・・・。 ①過食に伴う肥満は寿命を短くする! (カロリー制限をされた犬との寿命差は約2年!) 出典:生涯削痩していた 犬は,同腹の肥満した犬よりもほぼ2年長く 生存したことを確認 ( Kealyら2002年発表による) 犬の2年は大きいです、本当に・・・・。 ②日本における来院動物の体重過剰または肥満の割合 (日本ヒルズ・コルゲート社調べ 2011年5月) 小型犬:40% 中型犬:30% 大型犬:20% →日本の動物病院では、ペットの肥満に対し、十分な対策が取られて いないのでは? by 横井先生 ③ほんの「少し」の体重増加が「少し」ではない件 (例)8kgの犬が「1.2kg」増量するのは、56kgの人間が「8.4kg」も 増量したことに等しい・・・・(ぶひっ!) ④減量に最適な時期は10月~4月(運動療法を取り入れるには最適) ※肥満度に応じた運動療法を行う必要あり 獣医師が単に「太ってますよ」というだけでは減量は成功しない! ご家族(もちろん獣医師自身も)「肥満は病気」であることをしっかり認識すること。 その上でご家族に愛犬が「肥満している」という認識を持ってもらい、 どのようなリスクがあるか理解を求める。 (体重が標準の範囲内を超えていても、約半数のご家族の方は肥満と 思っていないとの報告あり) そして、どのように減量すべきか具体的に説明し、減量中の家族へ 精神的なサポートを行う、これが獣医師の役割だ、と書かれてありました。 (ぱちぱち ![]() 具体的には・・・・ ・減量用フードの提案(例:ヒルズ r/d など) ・BCSと体重から一日の給与量を求め、減量用フードと水しか与えない よう指示 ・適度な運動や遊びを提案 ・2週間に一度の体重測定のため来院をすすめる。 (1週間で0.5~1%のペースで減量させる。例えば体重10kgの犬で 1か月400g) 2週間ごとの体重測定で、順調に減量できている時は一緒に喜び、 ねぎらう。減量できていない場合は、フード量、おやつの有無、 運動のチェックなどを行い、ボトルネックを探り、改善案を提案する。 ![]() つまるところ、ダイエット・肥満予防には、家族と主治医の連携が大切!と結ばれていました。 いやはや、まったく同感であります ![]() 実は今回、実家のメタボなワンちゃんを心配する友達を誘っての参加 でしたが、愛犬を溺愛するお母さんをどう説得したものか、頭を 悩ませている様子でした。 家族がどんなに肥満のリスクやダイエットの大切さを説いても、 信頼する主治医からの厳しい一言には到底かないません。 モチベーションの維持がとかく難しいダイエット・・・・。 「私たちと一緒に理想体重を目指しましょう!」としっかり肩を組み 向き合ってくれる主治医の存在があればどんなに心強かろう、と しみじみ思います。 でもそのためには、私たち飼い主の、獣医師を見極める「選択眼」も 問われるのだと感じます。 患犬の健康のため、私たち飼い主にとって「耳が痛い」話も はっきり伝えてくれ、時に叱咤し、励まし、飼い主の重いお尻をぺしぺし 叩いて前進を促してくれる、そんな気骨のある獣医師さんを支持できる 飼い主でありたいものです。 今回のレクチャーが、友人宅で肥満のリスクとダイエットの必要性を 一考する良いきっかけとなってくれることを切に願いつつ・・・。 「健康な今だからこそ、ダイエットが有効なのです。」 この言葉に込められた竹村先生の想いが、どうかお母さんに届きますように・・・・。 以上、まとまりなくダラダラ書き綴ってきました今年のフォーラムレポート。 本当はBCSについて、個人的に思うところを語りたかったのですが、 ますますもって収拾が付かなくなりそうでしたので、今日はこの辺で 失礼いたします。 最後までお付き合いくださったみなさま、本当にありがとさんでした!! ![]() (おまけ) ところで、モチベーション維持にこういうものを利用してはいかがでしょう? ウェイトトラッカー (ヒルズ提供) http://pd.hills.co.jp/wm/tracker.html 会員登録(無料)すれば誰でも利用可能。 その日の体重、フード量、コメントを入力すると、自動的に体重の推移が グラフ化される、WEB体重管理帳です。 また、もし主治医からヒルズの体重管理用製品を処方され、与えている ご家庭であれば、「ペットスリムコンテスト」への応募もちょっとした モチベにつながるかも? 「ペットスリムコンテスト」 http://pd.hills.co.jp/wm/contest.html ※応募対象は動物病院の指導により、ヒルズの体重管理用製品で、 減量または体重管理を行った犬猫で、コンテストの応募は動物病院が 行います。 (飼い主が「体重管理ハンドブック」に必要事項を記入した上で 動物病院に渡し、病院がコンテストに応募する、という流れ。 ちなみに2012年度の応募受付締切日は2012年12月31日。) 参考までに、こちらは「ペットスリムコンテスト2011年レポート」 http://pd.hills.co.jp/wm/contest11_report.html 受賞犬の写真と飼い主さんの一言コメントが紹介されています。 「100g減量するだけでも大変でした」などの体験者の生の声は、 けっこう励みになりそう ![]() ![]() |
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