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      「千の風になって (Do not stand at my grave and weep)」 誕生秘話
      2012 / 06 / 10 ( Sun )
      今日は「千の風になって」の原詩(とされている詩)について、誕生秘話などを
      すこし。

      (※犬は登場しません)



      時は1932年のアメリカ。
      ドイツではヒットラーが政権を獲得し、これを危惧したヨーロッパ系
      ユダヤ人がアメリカにも多数亡命してきていた時代。

      アメリカ人女性メアリー・フライの友人、マーガレット・シュワルツコフ
      もドイツ系ユダヤ人でした。
      マーガレットは、母国ドイツに残してきた高齢で病身の母親を案じ、
      なんとか出国させようと手を尽くすものの、待てど暮らせど母親からの
      便りは届きません。

      日に日に心配を募らせていたマーガレットでしたが、やがて母親は
      既に亡くなっていたことが判明します・・・。

      マーガレットはショックのあまり神経衰弱を患い、毎日毎日
      泣き暮らしていました。

      ある日、キッチンテーブルで買ってきた商品の仕分けを二人で
      していた時のこと。
      突然、マーガレットが、メアリーの買ったものを見て泣き出しました。


      「それ、母が好きだったの。」


      お願いだから泣かないで、となだめるメアリーに、マーガレットは言います。


      「私は母のお墓の前に立って、さよならを告げることもできないのよ。」


      そういって、2階の自室に引きこもってしまいました。

      一人キッチンに残されたメアリーは、茶色の買い物袋を引きちぎり、
      手にしていたペンで紙片に一気にこみ上げる想いを書き綴りました。


      落ち着きを取り戻したマーガレットが階下に下りてきたとき、
      メアリーはマーガレットに紙切れを差し出しました。

      「これ、私が書いた詩なの。私の思う『ヒトの生と死のあり方』。
       あなたのためになるかどうかわからないけれど・・・。」

      詩を一読したマーガレットは、メアリーを抱きしめて言いました。


      「私、この詩を一生大切にするわね。」


      その詩こそ、現在、世界中でもっとも愛されている詩
      「千の風になって(Do not stand at my grave and weep)」の
      大元の原詩といわれます。
      (未だ諸説ありますが、現在では多方面からのリサーチ、
      本人へのインタビュー等により、ほぼ本命視されているようです。
      ただし、100%彼女が創作した詩かどうかは不明。)


      ※原詩はタイトルなし

      Do not stand at my grave and weep,
      I am not there, I do not sleep.
      I am in a thousand winds that blow,
      I am the softly falling snow.
      I am the gentle showers of rain,
      I am the fields of ripening grain.
      I am in the morning hush,
      I am in the graceful rush
      Of beautiful birds in circling flight,
      I am the starshine of the night.
      I am in the flowers that bloom,
      I am in a quiet room.
      I am in the birds that sing,
      I am in each lovely thing.
      Do not stand at my grave and cry,
      I am not there. I do not die.


      私のお墓の前で泣かないでください
      私はそこにはいません、私は眠ってなんかいません
      私は吹きわたる千の風の中にいます。
      私はそっと舞い落ちる雪
      私はやさしく降りそそぐ雨
      私は穀物実る畑。
      私は朝の静けさの中にいます。
      私は優雅に円を描いて空を駆る
      美しい鳥たちの中にいます。
      私は夜空の星の輝き。
      私は咲き誇る花々の中にいます。
      私は静かな部屋の中にいます。
      私は歌う鳥たちの中にいます。
      私は、美しく素晴らしいものの中にいます。

      私のお墓の前で泣かないでください
      私はそこにはいません、私は死なないのです。

                   (原詩にそってほぼ直訳)


      ご覧のとおり、きれいに韻(※)を踏んでいます!

      (※)
      weep- sleep/ blow- snow/ rain- grain/hush-rush/
      flight- night/bloom- room/ sing- thing/ cry- die


      これを、キッチンで短時間で一気に書き上げたわけですから、
      もはや・・・ある意味モーツァルトの域!!

      相手への強い思いやり・愛がなしえた一種の「神業」といえる
      かもしれませんね。
      もうひとつの神業は、この詩が人々の「共有財産」であり続けて
      いること。


      メアリー・フライは、この詩がどんなに有名になろうとも、
      その生涯で著作権を取得することも、自作の詩を出版することも
      ありませんでした。
      彼女は生前、インタビューでこう答えています。

      「この詩は私だけのものではありません、みんなのものです。
       私は今でもそう思っています。
       これは、愛や安らぎについて書かれたものです。
       もし私がお金を受け取ったりしたら、意味が無くなるでしょう。」


      だから、この詩には世界中に何バージョンもの派生詩が存在し、
      そのどれもが、「オリジナル」なのですね。


      私がメアリー・フライの原詩でハッとした点が3つあります。

      1点目は、「千の風になって(I am a thousand winds)」ではなく
      「千の風の中にいる(I am in a thousand winds)」となっている点。
      私の中では、とても大きな違いでした(長くなりますので理由は省略)

      2点目は、「私は美しく素晴らしいものの中にいる(I am in each lovely thing.)」
      はじめて目にする一行でした。
      in each lovely thingの中には、you(あなた)も含まれるのではないか?
      という深い解釈も一部にあるようです。
      (これ、まさに前回のブログに相通じる内容かも。)


      そして最後は、末尾の「I do not die.」
      「私は死んでなんかいません(I did not die)」ではなく、「私は死なない」
      ひょっとすると、作者メアリー・フライがこの詩で一番伝えたかった言葉
      なのかもしれません。

      「あなたの愛するものは死なない」

      ふと、フランスの実存哲学者ガブリエル・マルセルの名言が
      思い出されます。

       人を愛するとは、
       『いとしい人、あなたは決して死ぬことはありません』
       と言うことである



      一人の無名の主婦が、キッチンテーブルで一心に書き上げた愛の詩は、
      一部形を変えつつも、これまでも、これからも、世界中の人々の
      悲しみに寄り添い、心のなぐさめとなり続けることでしょう。


      神様がこの世に存在するかどうかはわかりませんが、
      もしおられるなら、この愛の詩が世に広く知れ渡ったことを、どれほど
      嬉しく喜ばしく誇らしく思っておられることかしらん・・・なーんて
      思ってしまいます。


      今日も最後までお読みくださり、ありがとさんでした!


      (追記)
      もちろん新井満さんの「千の風になって」も素晴らしい作品だと思います!
      個人的にメアリー・フライの詩はサプライズで、かつストンと腑に落ちた
      箇所が多く、今日は原詩をご紹介させていただきました。



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