慢性心臓病の食事療法について
      2009 / 09 / 17 ( Thu )
      先日、慢性心臓病の食事療法に関するセミナーを受ける
      機会がありました。
      講師は、日本獣医生命科学大学の竹村准教授。
      臨床事例を随所に盛り込みながら、時にユーモアを
      交えわかりやすく説明いただきました。

      心臓病に限らず「慢性」が冒頭につく疾患は、完治しない
      ため、治療は薬や食事で進行を遅らせる「対処療法」と
      なることをまず説明くださいました。
      約1時間の講義のポイントは次のとおりです。

      ①慢性心不全は、犬猫では発生が非常に多い
        →犬では、特に「僧帽弁閉鎖不全症」が多く見られる

      ②慢性心臓病では、特にナトリウム摂取量の制限が
        重要

      ③心臓性悪液質(※心不全に起因する重度の慢性栄養
        障害)は非可逆的な栄養障害であり手の施しようが
        ない。
        →予防策として、魚油のバランスよい摂取が有効
         とする米国研究チームの発表あり

      ④従来定説とされた「肥満は心臓病に良くない」は
        は否定されつつある(Obesity Paradox 「肥満の逆説」)

      上記のうち、②と④について、個人的に特に印象に残った
      内容をご紹介させていただきます。

      【ナトリウム摂取量の制限について】
      食事療法(※症状が重いケースは、利尿剤を併用)では
      高ナトリウム食を制限・禁止し、血圧と体内水分量の維持
      をはかる必要があるため、一般的には低ナトリウムの処方
      食を与えることが多いそうですが、竹村先生曰く、「主食に
      処方食を与えていれば、副食(おやつなど)はあまり
      気にせずとも大丈夫」と勘違いしておられる飼い主さんが
      多いそうです。
      警戒が必要な高ナトリウム食の主なものとして、
      パン、チーズ、ウィンナー、ロースハム、コンビーフ、
      はんぺん、かまぼこ、さつまあげ、しらす干し、コンソメ、
      ケチャップ、ソース、マヨネーズ など一例を挙げ、少量と
      いえども、毎日トッピングやご褒美、あるいは盗み食い
      などによって摂取することを禁止する必要があること、
      そして副食を禁止する際の障害として次の2点を挙げて
      おられました。

      ①慢性心疾患はシニア犬がかかるケースが多いため、
        既に食習慣(嗜好など)が確立していること

      ②飼い主の同意が得られないこと

      特に、②の飼い主の同意については、家族全員の賛同が
      不可欠なのですが、通院に付きそう頻度の多い奥様は
      同意してもご主人が「可哀想だ」「どうせ死ぬのだから
      (好きなものを食べさせてやりたい)」と反対するケースが
      一般に多く見受けられるそうです。
      高ナトリウム食を毎日摂取し続けた結果、急性肺気腫で
      口から泡やよだれを流し、過度の呼吸困難をきたして非常
      に苦しみながら亡くなっていく犬達を大学病院で多数見て
      いらした先生は、飼い主さんにもいろいろな考え方、
      愛情のかけ方があることを認めた上で、こうお伝えする
      ことにしているそうです。

      「そのとおり、犬も、私たちもいつか死にます。
      死ぬ時に、少しでも苦しまないで死んでほしい、これも
      飼い主の愛情ではないでしょうか?どうせ死ぬなら死なせ
      方を考えてみませんか?」

      真っ向から否定するのではなく、飼い主さんの考えを
      受け止めつつ「一方で、こんな視点、見方もありますよね?」
      と別の視点を飼い主さんに提示すること、その労を厭わない
      こと。
      これは、TEAM WILLにおいても常に心がけたい姿勢で
      あります。

      【肥満の逆説「Obesity Paradox」】
      「心疾患患者の肥満は心臓に悪いため、減量が必要」とす
      る従来の説はひょっとすると間違いかもしれない、といわれ
      ているそうです。
      ヒト医学では、過体重や肥満は、心血管疾患やそれに付随
      するリスクの一因を導くことになるものの、心血管疾患と
      診断された患者において、肥満は予防的役割を果たす
      可能性があることが米国の医療機関の論文で発表された
      そうです。
      (※論文の内容は、疾患の重症度が同じ場合、心臓病を
      もつ肥満患者はよく治療に応じ、痩せた患者よりも良い結果
      となり生存が高まったというもの。)

      動物においても、2008年秋、米国タフツ大学により「心不全
      の犬の生存率においては、体重の変化が重要となりうる」と
      する論文が発表されたそうです。

      心不全を患った犬の生存率を肥満度(痩せ~肥満)別に統計
      をとった結果、最も生存日数が短かったのは、「痩せ気味の
      犬」であり、生存日数が最も長かったのは、「肥満犬」であった
      そうです。
      また、同大学では、心不全と診断されて以降、体重に変化なし
      または減少した犬は、体重が増えた犬と比して生存率が悪
      かったという結果も発表されたそうです。
      この結果等を踏まえて、犬においても、ヒト医学で論じられて
      いる肥満の逆説(Obesity Paradox)が当てはまるのではない
      か?との説が持ち上がっているそうです。

      もちろん、体重を増やすことが何でもよいというわけで
      はなく、心臓病の犬が、体重減少傾向にある場合は
      重要視すべきということでは?と先生はおっしゃっていま
      した。
      Obesity Paradoxのポイントは以下のとおりです。

      ●肥満犬が適正体重の犬よりも生存率が高い理由は依然として不明
      ●心臓にとっては、肥満よりも削痩(ガリガリに痩せる)方が強敵
      ●削痩気味の犬の心不全症例こそ、栄養指導が必要


      最後に、あくまで個人的な感想ですが・・。

      慢性心臓疾患と診断された場合、日本では療法食(フード)
      が食事療法のベースになると思います。
      そのため、例えば手作り食を長年楽しんできた犬が、
      療法食をなかなか受け入れてくれないケースが生じた場合
      治療が難航することになるでしょう。

      以前、私が愛犬に完全手作り食を与えていた頃、友人から
      こうアドバイスされたことがあります。

      「この先、入院や療法食を与えなければならなくなった際、
       手作り食のみを与えられてきた犬はドッグフードを
       受け付けない可能性もあるので、時々手作り食に
       少量のフードをまぜるか、1食はフードにするなど、
       日頃からフードになじませる機会を作っていくといいよ」

      愛犬が若く、健康な当時は、つい先送りしてしまいがち
      な私でしたが、プレシニアの域に入った今、友人の言葉の
      重要性をひしひしと感じています。
      人間でも犬でも、歳をとるにしたがい、身体に様々な
      不調や疾患が見られるようになります。
      「歳をとると、身体は病気のデパート」と語る獣医さんも
      おられます。

      動物栄養学等の適正な知識に基づき、良質の食材
      を用いた手作り食は、愛犬の健康増進に寄与すると
      個人的には考えています。
      ただ、加齢に伴い慢性疾患が多く見られる傾向にある
      こと、そして慢性疾患は完治しないこと等を考慮しますと、
      将来の「もしも」のケースに備えて、若い頃からフードへの
      抵抗を減らす工夫を併せて取り入れてあげることも、
      一つの愛情かな?と思う今日この頃です。

      すっかり長くなってしまいました(^_^;)。
      最後までお読みくださり、どうもありがとうございます!

      (おまけ)
      講習会の前日、元同僚が送別会を開いてくれました。

      いただいたお花は早速事務所に
      CIMG0291_convert_20090919131209.jpg


      「はばたいてね」といいながら、Fさんがそっとくれた天使の羽
      CIMG0301_convert_20090919131309.jpg

      Fさんの気持ちが伝わって、胸が一杯になりました。
      もったいなくて、まだ食べられずにいます。

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