オススメの一冊!「やさしくわかる犬の股関節形成不全症ケア」
      2011 / 02 / 09 ( Wed )
      先日、参加した講習会の会場でふと手にとった本がこちら。

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      「やさしくわかる犬の股関節形成不全症ケア」
      発行:ファームプレス(2010年2月)
      定価:1,050円
      原題:Veterinary Advice on Hip Dysplasia in Dogs(2004年発行)


      ポケットサイズながら、股関節形成不全症(HD)について
      飼い主が把握しておきたい以下の情報がしっかり網羅されています!

      ・発生要因
      ・症状
      ・治療
      ・発生の制御方法


      著者のゲイリー・クレイトン・ジョーンズ氏は、整形外科専門の獣医師で、
      現在イギリス獣医師会において股関節形成不全症対策の主任検査員として
      活躍されている方だとか。
      (ちなみに翻訳された森淳和獣医師は、日本で犬の遺伝性疾患を減らす
       取組として股関節の評価・データベース登録を進める
       日本動物遺伝病ネットワーク(JAHD)理事長。)


      写真やわかりやすい解剖図も随所に盛り込まれているので、飼い主
      さんにもイメージしやすい作りになっている点がグッド!


      多くの犬種に発生がみられ、犬の機動性や生活の質を低下させる
      原因となりうる股関節形成不全症。

      純血種の子犬(大型犬などの好発犬種は特に)を新たに迎えいれることを
      検討されている方、すでにHDを患っている愛犬の飼い主さんや、
      愛犬にHDを疑うような症状がみられる場合は、ぜひお読みいただき
      たいですね。
      医学事典よりはシンプルな表現で書かれていて読みやすいですし、
      有益な情報がたくさん詰まっています。

      出典のはっきりしないネット情報を何時間も検索するより、
      この1冊を読んだ方がずっと早いし得るところが多いと思います。
      この内容でこのお値段は絶対買い!

      ネットでも購入できるようですので、ご興味のある方はタイトル名で
      検索してみてくださいね。
      現時点では、国内のアマゾンでは取扱がないようです。
      (Amazon.ukではあるのに・・・。)


      アドバイスの一部をちょこっとご紹介します。

      まずは運動制限について。

      【若犬齢の場合】

      ・最もよい運動方法はリードをつけてゆっくり歩かせること。
       
       →リードをつけてゆっくり歩くことで、犬には各々の肢を一つずつ
        使うための力が働く。
        リードフリーにした場合は、うさぎが跳ねるような「バニーホップ」
        をするようになり、後肢の筋肉にとって有益ではない。

       ※ひどい跛行(ビッコ)がみられる犬の場合は、4~5分「ゆったり
        リード歩行」を日に何回か分けて行うことからスタートし
        症状が改善するにつれ、おおまかな目安として一回の歩行時間を
        1週間単位で約5分ずつ増やす。
       (歩行の長さによってビッコの程度が増す場合は、歩行を短くすべき)

        →多くの場合、歩行させる「回数」の方が「長さ」よりも重要で、
         これは休息をとった後で起き上がる際にこわばりが生じることが
         多いため

        (ちなみに、この「休息後のこわばり」は、規則的な短い時間の
         運動を一日を通じて行うことで、軽減することができるそうです)


      【高齢犬の場合】

      ・若年齢犬同様、長時間の休憩後の長時間の運動は避け、
       短時間で回数の多い運動が関節の機能にとっては良い。

       →平坦な地面で運動させるようにし、石の多い海岸や、
        深いぬかるみの中、倒れた木々を越えさせるような場所では
        運動しないようにする。

      ・運動量は毎日一定量で維持すべきで、週によって短かったり、
       週末だけ長くなったりしないようにすべし。
      (水を喜ぶ犬の場合は特に、ハイドロセラピーのような非負重運動も
       有効)


      非ステロイド系薬物などの薬物投与量、投与時刻についても、
      専門医としての豊富な経験を背景にした興味深いアドバイスあり。


      最後に、私が一番「そのとおりだなぁ!」と思ったのが、
      股関節形成不全症防止策「繁殖計画」の基礎となるX線による
      スクリーニング検査の必要性を説く箇所。

      著者は言います。

      「スクリーニング検査の実施が頻繁に行われるようになるために
       必要な条件は、犬を飼おうとする人々が、スクリーニング検査を
       受けた親犬から産まれた子犬を積極的に求めようとすること。
       この場合、ブリーダーに対して割増料金を払ってでも障害の少ない
       子犬を求めようとしなければならない」


      そしてスクリーニング検査は、繁殖に使用しない犬を含め、血縁関係の
      ある犬をなるべく多く比較することが大切だと。
      犬の繁殖においては、雌より雄の方が影響が大きい(雄犬は1頭以上の
      雌犬と交配される可能性があるため)という箇所にもなるほどと
      考えさせられました。


      血縁関係のある犬をできるだけ広範囲で調べる必要性については、
      日本動物遺伝病ネットワーク(JAHD)の以下のサイトで、
      図入りで背景がわかりやすく説明されています。

      遺伝性疾患を減らすために重要なこと


      JAHDのサイト上で、飼い主の同意が得られた検査犬の股関節の
      評価結果・血統書名などを含む犬情報が公開されています。
      現在、公開件数はまだまだ少ないものの(恐らく検査件数自体が
      欧米と比べても圧倒的に少ないことでしょう)多くの飼い主さんの
      協力により公開頭数が増えていくことで、これらの情報を使っていずれは
      疾患のない、または発症リスクの低い血統を選んで交配していくことも
      可能になります。
      痛みの中で不自由な生活を余技なくされる犬を減らすために、
      私達飼い主ができることは決して小さくないのですね。


      最後に、dog actuallyの興味深いコラムをリンクしますので
      ご参考までにこちらもご覧くださいね。

      犬の股関節形成不全根絶への各国の取り組み(1)

      犬の股関節形成不全根絶への各国の取り組み(2)



      笑顔で暮らせる犬と人が増えますように!
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      [photo by  {Kate C.}]


      (余談)
      この本の発行元(ファームプレイス)のサイトでも購入できる
      ようです。

      以下はファームプレイス社の紹介文より。

      「股関節形成不全症の重要な知識を手の平サイズに凝縮!!
       インフォームド・コンセントのアンチョコに!
       待合室用に!
       オーナーさんの知識吸収に!
       犬に携わるすべての方に贈ります。」



      ア、アンチョコって・・・・。


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