喪失から何を引き出すか
      2011 / 01 / 22 ( Sat )
      「ドイツ語学科の新入生のみなさーん、こっちですよ~」

      入学式を終えた私たちは、ツアーコンダクターよろしく
      旗をはためかせたドイツ人教授のもとに集まりました。

      「ドイツ語学科にようこそ!ご入学を心から歓迎します。」

      右も左もわからぬ私たち新一年生とその親たちをぞろぞろ
      引き連れ、教授自ら大学構内を案内してまわってくれました。

      予定外の「構内ツアー」参加者の誰もが、ドイツ語学科の
      先生だと信じて疑わなかったその教授、実は他学部の先生でした!
      私の入学最初のサプライズ(笑)

      この、ビールジョッキがいかにも似合いそうな恰幅のよい、
      ニコニコ顔の先生の名は、アルフォンス・デーケン教授。
      当時、哲学部の先生でした。
      (※余談ですが、実際に某飲料メーカーから、ビールCMの
        出演依頼がきたとか。頭に月桂樹の冠をかぶって
        「Prosit!(乾杯~!)」してくれないか、と。
        もちろん丁重にお断りしたそうです 笑)


      デーケン教授は「死への準備教育」を日本に広めた方で、
      教授の「死の哲学」の授業は大人気講義でした。

      物珍しさも手伝って、私も「死の哲学」を履修することにしました。
      そして知ったのです。              
      明るくユーモアたっぷりの先生が、少年時代に肉親や親友たちの
      理不尽としかいいようのない惨い死を目の当たりにしてきたことを。


      卒業後長い年月が経ちましたが、私が今でも鮮明に思い出す講義の
      ひとつがこの「死の哲学」。
      (専攻したハズのドイツ語は忘却の彼方・・・・たはは)

      デーケン先生は、「別れは小さな死」というフランスのことわざを
      教えてくれました。
      大切な存在との別れを体験すると、自己の小さな一部が死んでいく。
      でも、こうした「小さな死」を通して新たな自分を誕生させることも
      可能なのだよ、それこそが別れのポジティブな意義なのだ、と。

      この悲嘆を克服するプロセスを、他人が代わって行うことはできない、
      自分の中で時間をかけて消化する以外に仕方がないのだと先生は
      力説されていました。


      そして、最も頻繁に思い出されるのが、先生の学生時代の師の一人、
      フランスの実存哲学者ガブリエル・マルセルの次の名言です。


       人を愛するとは、
       『いとしい人、あなたは決して死ぬことはありません』
       と言うことである


      デーケン教授は、この言葉は決して単なる願望の表現ではない、
      と述べられました。
      愛によって結ばれた絆は切れることはない。
      愛する相手の死とは、愛に備わる「試金石」であって、
      相手をどれだけ深く愛しているかを自分自身に認識させて
      くれるものなのだ、と。

      曽野綾子さんとの共著「旅立ちの朝に」の中で、こう説明されています。

      『相手の死をすべての終わりと考えることはマルセルによれば
       愛への「裏切り」であり、相手の永生を確信することこそが
      「誠実」なのです。』


      「あなたは決して死なない」


      10代の頃は、キリスト教の信仰あってこその実感なのかな?と
      どこかピンと来なかったのですが、
      歳を重ねた今、確かに最高の「愛の言葉」のひとつだと感じている
      自分がいます。


      最後は、先生が教えてくれたドイツの有名なことわざでお別れです。


      “Geteilte Freude ist doppelte Freude,
      geteiltes Leid ist halbes Leid.”

      共に喜ぶは2倍の喜び、共に悲しむは半分の悲しみ


      チーム・ウィルの仕事を続けていく上でも、胸に刻みたい言葉です。 



            _prof Deeken1

      「ウィル・デューラントの美しい言葉―「大きな苦しみを受けた人は、
       うらむようになるか、やさしくなるかのどちらかである」―が
       示すように、悲劇から何を引き出すかは
       究極的には各自の主体性にかかっていると言えよう。」

      アルフォンス・デーケン   (死への準備教育Death Education より)







      00 : 32 : 21 | その他 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
      <<ゴンタくんは元気です | ホーム | 夢と馬とちょこっと猫>>
      コメント
      コメントの投稿














      管理者にだけ表示を許可する

      トラックバック
      トラックバック URL
      http://teamwill.jp/tb.php/199-12592543
      この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
      | ホーム |