サン・テグジュペリの言葉  ~僚友~
      2011 / 01 / 15 ( Sat )
      郵便受けの中に、葉書が一枚。
      ベリー宛てのバースデーカードでした。
      昨年一度だけお世話になった動物病院から。
      ああ、こちらには連絡していなかったなぁ。

      最愛の犬の7度目の誕生日を、本人不在で迎えることになろうとは
      夢にも思わない、幸せで傲慢だった自分をぼんやり思い出しました。


      帰宅途中、読みかけの本を開くと、ある文章に目がとまりました。

      作家で職業飛行家でもあったサン・テグジュペリ(星の王子さまの作者)が、
      1926年以降、郵便飛行士として共に極限状態を経験した亡き僚友たちに
      寄せた一文です。
      (ちなみに、この「人間の土地」は、僚友アンリ・ギヨメに捧げたもの。
       ギヨメは、同書が出版された翌年、地中海上でイタリア軍に撃墜され
       帰らぬ人となりました)


      気づけば、同じ箇所を何度も何度も目でなぞっていました。



      ぼくらの生活が僚友たちからぼくらを遠ざけ、
      ぼくらに彼らの上を思う余裕のある時間を与えないかもしれないが、
      しかしまた彼らはどこかにいるのだ、どこともわからない所に
      黙りこくって、忘れられて、しかしまたきわめて親密に!

      それでもしぼくらが彼らの道を横切るようなことがあると、
      彼らは炎のような喜びを見せてぼくらの肩を揺すぶってくれる!

      (中略)

      とはいうものの、やがてぼくらもすこしずつ気がついてくる、
      あの一人のあの明るい笑い声を、二度と聞く日はもうないのだと、
      あの庭園は永久にぼくらのために閉ざされてしまったのだと。
      するとこのとき、はじめてぼくらにとってまことの服喪が始まるのだ。
      それはけっして裂くような悲しみではないが、しかしどうやらほろ苦い。

      何ものも、死んだ僚友のかけがえには絶対になりえない、
      旧友を作ることは不可能だ。
      何ものも、あの多くの共通の思い出、ともに生きてきたあのおびただしい
      困難な時間、あのたびたびの仲違いや仲直りや、心のときめきの宝物の
      貴さにはおよばない。
      この種の友情は、二度とは得難いものだ。
      樫の木を植えて、すぐその葉かげに憩おうとしてもそれは無理だ。

       これが人生だ。


                    アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ
                    『人間の土地』 僚友 より
                     堀口大學 訳

      saint-exupery01.jpg       
      Antoine de Saint-Exupéry(1900.6.29 - 1944.7.31)



      13 : 50 : 00 | その他 | page top
      | ホーム |