去年の木 ~つながっていくいのち~
      2010 / 12 / 17 ( Fri )
      先週末、山中湖にあるペンション・モーツァルトで開催された、
      理学博士 佐治晴夫氏のクリスマス・レクチャーに参加してきました。
      佐治さんのお話を伺うのははじめて。
      「生と死の境を超えていくもの」というテーマに惹かれて
      思いきって一人で参加してみました。

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      講義後、受講者に囲まれる佐治さんをパチリ。
      参加者は実に多岐にわたり、高校生や院生、歌手、獣医学生や
      大学教授(佐治さんの元教え子)、会社員などなど。


      3時間にわたり、縦横無尽に繰り広げられた佐治ワールド。
      緻密でありながら壮大。科学的視点について、はやぶさの
      名前に込められた科学者たちの矜持、糸川イズム、
      小学校の出張講義体験談などなど時に熱く、時にユーモア
      たっぷりに語ってくださいました。

      今日は、佐治さんが朗読くださった物語の中からひとつ
      ご紹介させていただきます。
      「ごんぎつね」「手袋を買いに」などの童話で知られる、新美南吉の
      「去年の木」という作品です。 



                 去年の木
                               新美南吉


       いっぽんの木と、いちわの小鳥とはたいへんなかよしでした。
       小鳥はいちんちその木の枝で歌をうたい、
       木はいちんちじゅう小鳥の歌をきいていました。

       けれど寒い冬がちかづいてきたので、
       小鳥は木からわかれてゆかねばなりませんでした。
        
       「さよなら。また来年きて、歌をきかせてください。」

       と木はいいました。

       「ええ。それまで待っててね。」

       と、小鳥はいって、南の方へとんでゆきました。


       春がめぐってきました。野や森から、雪がきえていきました。
       小鳥は、なかよしの去年の木のところへまたかえっていきました。
       ところが、これはどうしたことでしょう。
       木はそこにありませんでした。根っこだけがのこっていました。
       
       「ここに立ってた木は、どこへいったの。」

       と小鳥は根っこにききました。

       根っこは、

       「きこりが斧でうちたおして、谷のほうへもっていっちゃったよ。」

       といいました。


       小鳥は谷のほうへとんでいきました。
       谷の底には大きな工場があって、木をきる音が、
       びィんびィん、としていました。

       小鳥は工場の門の上にとまって、

       「門さん、わたしのなかよしの木は、どうなったか知りませんか。」

       とききました。

       門は、

       「木なら、工場の中でこまかくきりきざまれて、マッチになって
        あっちの村へ売られていったよ。」

       といいました。


       小鳥は村のほうへとんでいきました。
       ランプのそばに女の子がいました。
       そこで小鳥は、

       「もしもし、マッチをごぞんじありませんか。」

       とききました。

       すると女の子は、

       「マッチはもえてしまいました。
        けれどマッチのともした火が、まだこのランプにともっています。」

       といいました。


       小鳥は、ランプの火をじっとみつめておりました。
       それから、去年の歌をうたって火にきかせてやりました。
       火はゆらゆらとゆらめいて、
       こころからよろこんでいるようにみえました。


       歌をうたってしまうと、小鳥はまたじっとランプの火をみていました。

       それから、どこかへとんでいってしまいました。


      _tree2.gif


      きっと小鳥は、ランプの火の中に、なかよしだった木の「いのち」
      の片鱗を見つけ出したのだと思いました。

      いのちは形を変え、引き継がれていく。それが命の本質だよ、
      佐治さんはそうおっしゃりたかったのかもしれません。


      つながっていく「いのち」
      つながっている「いのち」


      正直、私はまだその感覚を持つまでには至らないけれど、
      なんとなく大切な視点のヒントをいただいた、そんな気がしています。

      (ちなみに、この詩をイタリア語に翻訳して前教皇ヨハネ・パウロ2世に
       お聞かせしたところ、大変感動なさっていたそうです。)


      レクチャーが終了したのは午前0時。
      その日は、星がとても綺麗な夜でしたので、ペンションオーナーの
      天体望遠鏡をお借りして外で冬の夜空鑑賞会。
      オリオン座に北斗七星、シリウスにプレアデス星団が肉眼でも
      はっきり見えました!
      しんしんと澄んだ夜空に、流れ星もキラッ。

      わ~、キレイだね~とわいわいやっていると、佐治さんが
      いらして、「あれがいのちの源ですよ」とオリオン座の、
      小三ツ星の真ん中を指しました。
      「M42」と呼ばれ、アミノ酸が豊富なのだとか。

      (参考)
      ori_02.jpg


      へええ~!と夜空を見上げる一同。
      ふと、(夜空を仲間と見上げたのは、小学生以来だったかな?)

      最後までその場に残って夜空を見上げていた3名は、
      偶然にもみんな同部屋でした。
      ベッドに入っても話しは尽きず、学生時代に戻ったみたいで
      なんだかとても楽しい一夜でした。

      翌朝、紅富士を拝むことができました。
      _mozart2.jpg


      こちらは早朝の山中湖と富士山。
      _Mozart7.jpg
      ベリーと朝方の山中湖ビーチを散歩した日を思い出しつつ。


      帰り際、「富士山ありがとう」みんなで手を合わせました。



      (おまけ)
      お母さんと一緒にお泊まりに来たトイプーさん。
      朝ドアを開けたら、トコトコ入ってきて、しばらく私のベッドを
      探索。ついにお縄の図。
      _Mozart10.jpg

      犬の同伴については、鳴き声やトイレがしっかりしつけられていて
      他のお客様に迷惑がかからない子の場合は、一緒に寝泊まりすることは
      OKとのことでした。
      ただし、共有スペース(ダイニング、サロン)は、原則立ち入りNGだそう。

      星、音楽、文学や美術のいずれかがお好きな方には超オススメの
      隠れ家的ペンションです。
      _Morzart9.jpg
      夜はちょっと幻想的。


      ちなみに、オーナーご夫妻のお料理もすごく美味しい!
      在仏のお友達から送られる、日本ではここのみ!という珍しい
      食材も食卓にのぼります。
      _Mazart13.jpg

      お風呂は普通サイズですが、近くの温泉「石割の湯」から
      お湯を引いています。(パジャマは要持参)

      チェックアウト時間も特にないので、翌日はゆーっくり
      くつろげ点もポイント高し。
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