FC2ブログ
      犬の膵炎 病態と診断
      2018 / 01 / 14 ( Sun )
      先代コリーを急性膵炎で亡くして以降、「膵炎」という言葉を目にしたり、
      耳にしたりするだけで心臓がドキリとします💦

      我ながら過剰反応だとは思うのですが、おそらく膵炎で
      愛犬が苦しむ姿を目にしたことが一度でもおありのご家族でしたら
      おわかりいただけるのではないかなぁ・・・なんて。

      愛犬に臨床症状(食欲・元気喪失)を認めて通院した初回の
      生化学検査では、特に異常は認められませんでした。
      (よって、当時の主治医は胃腸炎と診断なさった模様です)

      が、時間を追うごとにどんどん症状が悪化し、翌日の夜に
      私が帰省した段階では、素人目にも症状の重篤さが見て取れ、
      急ぎ夜間救急に搬送しました。

      その時点での犬膵特異的リパーゼの結果を、後日伺いましたが、
      650 μg/l(参考基準値:≦ 200 μg/l)で、臨床症状やエコー等の
      諸検査結果も踏まえ急性膵炎と診断できるだろう、とのことでした。
      (十二指腸閉塞の可能性を排除するため、バリウム検査も行いました)


      ベリーが膵炎を発症した2010年当時、急性膵炎診断における有意な
      マーカー検査としては、「犬膵特異的リパーゼ(Spec cPL)」のみでしたが、
      最近では外注検査せずとも院内でより簡便に安い費用で、
      膵由来リパーゼに特異性が高いとされる「犬リパーゼ活性(v-LIP)を
      測定できる病院も増えてきたそうですね。
      (ただし、富士ドライケムを導入している動物病院に限られますが。)


      重篤化しがちな急性膵炎の治療は一にも二にも時間との勝負ですので、
      外注検査となる「犬膵特異的リパーゼ」の結果が判明するのを待たずに
      先行して治療に入るケースが多いと思われますが、その点、
      院内ですぐに結果が判明するv-LIPでしたら、治療する側、家族双方に
      とってメリット大ですよね。

      (ちなみに犬膵特異的リパーゼ簡易検査キット「スナップ・cPL」については、
       常備している病院はかなり少数のように感じます)

      IMG_7899.jpg
      ※以前、往診の先生に頼み込んでご手配いただいた簡易測定キット。
      これが自宅にあれば、すぐ測定いただけ安心だな、と思いまして。



      さて今日は、東京大学の大野准教授が2015年に動物臨床医学誌に
      寄稿された記事の一部をシェアさせていただきます。

      犬の急性および慢性膵炎の診断治療の最前線


      ※ちなみに以下は、私自身の理解のために内容をまとめて
       みたものです。必ずご自身で上リンク先をご参照願います。



      ==========================
       「犬の急性および慢性膵炎の診断治療の最前線
           -  1. 膵炎の病態と臨床病理学的診断」要約

      【膵炎の病因】

      犬の場合は不明な点多し。

      (様々な疾患、薬剤、病態などが危険因子として挙げられており、
       最近の研究でも高肪食高脂血症が関与している可能性は
       かなり高いといえる一方で、ステロイド薬は膵炎の危険因子とは
       考えられていない
      。)


      【犬の膵炎の症状】
      食欲不振、嘔吐、衰弱などが多く、半数以上では腹痛もみられる。
      ※犬においては膵炎による肝外胆管閉塞が多いため、
        黄疸の鑑別診断でも膵炎を忘れてはならない。


      膵炎を疑う症状の有無は、膵炎の診断、重症度の判断において極めて重要。
      →検査マーカーのみで膵炎を判断するのは問題あり。


      【膵炎の診断】

      1)膵炎を疑う臨床症状があること
      2)膵特異的リパーゼが 基準値を超えていること
      3)超音波検査で膵炎を示唆する異常所見があること


      1)~3)を確認することにより、より診断に自信が持てるものの、

      膵炎診断でも最も大事なのは「除外診断」。

      ⇒上記すべてが膵炎を支持していても、他の疾患(例えば消化器型リンパ腫など)
        の可能性も否定できない。

      ⇒マーカー検査は重要であるが、他の疾患(とくに腫瘍性疾患)の
       可能性をさまざまな検査により除外する努力を惜しんで はいけない。

      ⇒一般的な生化学検査では、複数の肝酵素やビリルビンが
        上昇することが多く、高血糖(まれに低血糖)が みられることがある。
        生化学検査を一見すると肝疾患と混同する可能性
        (※膵炎では胆管炎などを併発していることも多いが)があるため
        注意が必要。


      【CRPとの相関性】

      犬の膵炎は基本的に炎症性疾患であり、 CRP(※) は
      顕著に上昇することが一般的。
      ※CRP(C反応性蛋白):体内で炎症反応や組織の破壊が起きている際に
                     血中に現れるタンパク質。

      ところが、東大の研究においては、 cPLI (膵特異的リパーゼ)や
      v-LIP (犬リパーゼ活性)上昇例のすべ てにおいて CRP が
      上昇するわけではなく、有意な相関も認められなかった。
      ⇒cPLI や v-LIP が潜在的あるいは組織学的膵炎をも検出していることを
        意味していると考えられる。



      膵炎の重症度マーカーとして、CRP は 極めて有用性が高いことが
      報告されており、継続的な モニターが推奨されている。

      犬の膵炎症例でも、CRP が症状と関連して変動することが多く、
      重症度や治療 反応性の評価として、その有用性を実感している。

      (ただし初診時1点みのCRP値では臨床症状スコアや予後と相関が
      認められない。)



      【膵炎の予後因子】

      膵炎の重症度および予後予測のためには、多臓器の評価が重要であり、
      消化器症状(嘔吐、下痢、食欲など)だけではなく、呼吸器症状、
      黄疸などと共に炎症反応(CRP)、腎臓系(BUN, Cre)、血糖(Glu) などを
      用いてモニタリングすることが妥当。


      また東大の研究では、初診時の膵特異的リパーゼが重度に上昇する場合は
      軽度上昇例よりも予後が悪いという結果も得られており、
      今後さらに 研究を行う予定。




      【膵特異的リパーゼ(cPLI)と新規リパーゼ活性(v-LIP)】

      従来のリパーゼ(LIP)
      膵リパーゼ以外のリパーゼ(胃、肝リパーゼ他)も測定するため、
      膵炎に対する特異度の低さが問題となる。
      (「リパーゼが高い=膵炎」とはならず。)


      犬膵特異的リパーゼ(cPLI  Idexx社)
      膵臓のリパーゼ だけを測定するように開発された検査法であり、
      特異度が高いことが報告されている。

      ※cPLI に関する論文報告は極めて多く、最も科学的に評価された検査法
       といえるものの測定はけっして簡便ではなく、検査を依頼して結果を得るまでに
       数日かかるというタイムラグ上の問題点あり。
      (院内で迅速簡易に測定可能な簡易キット「スナップ・cPL」も
       発売されている)



      v-LIP (富士フィルム)
      膵リパーゼに対する特異性を向上させた新しい活性測定法。

      院内機器で容易かつ比較的安価に測定可能。
      ただしv-LIP は PLI よりも歴史が浅いこともあり、
      その臨床的有用性に関してはまだ十分に検討されていない部分あり。
      (ちなみに東大にて行った以下の検証においてはv-LIPとの間に
      高い相関性を認めたとのこと)

      (東大における検証)
      膵炎が疑われる 102 頭における検討を行ったところ、
      v-LIP と cPLI との間には強い相関を認め、cPLI を
      ゴールドスタンダー ドとした時の v-LIPの陽性的中率は
      98.1 %と極めて高かった。


      一方で cPLI、v-LIP共に臨床症状スコアや重症度スコアと
      有意に関連しないことが同研究の中で明らか なっており、
      膵リパーゼだけで犬の膵炎を臨床的に評価、
      モニターすることには問題あり。

                                 
      参考:
         「犬の急性および慢性膵炎の診断治療の最前線
           -  1. 膵炎の病態と臨床病理学的診断」
         大野 耕一、2015、「動物臨床医学 ₂₄(₄)₁₅₁-₁₅₂, ₂₀₁₅
      ==========================

      膵炎の診断は、臨床症状や超音波検査、膵リパーゼ等と併せて
      相対的に判断する必要がある、とのことですね。
      お客様わんこの中には、膵炎に特異的な臨床症状がなんら
      みられないにも関わらず、膵リパーゼが測定不能なほど高い、
      という子もいました。

      膵炎の診断は、経験豊富な獣医さんといえども、なかなか
      悩ましいこともありそうですね。

      重篤な持病を抱えた子が、膵炎を併発するケースも
      あるでしょうし、その場合は更に治療に難儀することと
      思われます・・・💦


      (ちなみに私は、愛犬に膵炎の疑いが少しでも認められたら、
      すぐに膵炎の治療に入ってください!!とお願い
      することにしています。)

      重篤化しやすい大型犬ということもありますが、
      やはり膵炎は、怖いです・・・・・。

      foodpic6559052_201801141053558fe.jpg

      とはいえ。

      ゴンちゃんに珍しく下痢、嘔吐がみられ、
      先生が念のため測定くださったリパーゼが1000以上あったとの報せを受けて。

      (ああ、ゴンタも急性膵炎だ!!!どうしよう、どうしよう・・・!!)

      と、いい歳して号泣&パニック状態となってしまった自分を
      深く反省・・・・(恥)

      リパーゼの高値=膵炎とは限らじ、と知識としては持っていたはず
      なれど、瞬時に最悪の可能性にどっと意識が向かい、
      一人あたふた状態でした💦

      今考えても、我ながらいと恥ずかしなうろたえっぷりでありましたが、
      ゴンちゃんには、膵炎のあの惨い苦しみを体験させずに済んで
      本当に本当によかったと、今でも折に触れて思います。


      11 : 40 : 12 | 犬の病気関連 | page top
      | ホーム |